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切り取ってよ、一瞬の光を

エンターテイメントの話

マッサージ探偵ジョーが面白い~ミステリの様式美とトンデモ設定の調和~

先週から、「マッサージ探偵ジョー」のことばかり考えている。ずっと頭から離れないので、ダイレクトマーケティング的に同ドラマについて記事を書くことにした。

 

※以下、ミステリ部分のネタバレはしていませんが、第一話の内容や展開をモリモリ記載しています。

 

 

「マッサージ探偵ジョー」とは、テレビ東京・土曜深夜のドラマ枠「土曜ドラマ24」において、4月から放送が開始されたKAT-TUNの中丸雄一さん主演のサスペンスドラマである。探偵役がマッサージ師であり、容疑者にマッサージを施すことにより事件の謎を解くという新感覚ミステリで、テレ東深夜らしいお色気シーンと、実用的な「ツボ」の豆知識、さらに異常な中毒性を持つエンディングテーマ・ダンスと、とにかく見どころにあふれている。放送前から「マッサージ探偵」という絶妙なB級感の漂う響きと、マッサージ師の服が妙に似合う中丸くんのビジュアルがツイッターで話題になっていた。うすた京介先生の漫画で育った身として「カリスマ整体師 あおすじ吾郎」*1に似たにおいに惹かれ、意気込んで見たのだが、期待を上回る面白さだった。

 

 

オープニングでは、どこかで見たことのある名探偵たちのコスプレをした中丸くんが映し出される。頭脳が大人の小学生探偵、じっちゃんが有名な高校生探偵、実に面白い天才物理学者といった有名どころから、ジャニーズの先輩たちが演じた探偵まで、畳みかけるように現れる演出が、このドラマが探偵もののパロディであることを物語っており、攻めの姿勢を感じさせる。

 

本編にも、パロディや小ネタがこれでもかと詰め込まれている。横山めぐみさん演じるセクシーなマダムがシルクのローブを着て籐の椅子に座っているシーンはどう見てもエマニュエル夫人だし、マダムの裸体を隠していたバッグをジョーがよけて、あわや!と思いきや、フラワーアレンジメントで見えない、という二段仕込みの演出はエヴァンゲリオンを連想させる。

ダイエットサプリ「ヤセマクリマクリスティ」は、もちろん90年代のヴィジュアル系バンド「ラクリマ・クリスティー」が元ネタ*2であり、アラサーのツボを押さえたチョイスが憎い。インターホンのボタンを親指で押すシーンも、マッサージ師という設定を徹底していて文字通りグッときた。

 

コミュ障気味で猫背のジョーだが、ツボの名称を呪文のように唱えた途端、人が変わったように超絶テクニックでマッサージを施し、人体の秘密と事件の謎をほぐしていく。刑事が自信満々に披露する推理が頓挫したところで、ジョーが満を持して謎解きを始めるのが痛快だし、「謎がほぐれました」「事件のツボはここだ!」といった決め台詞も、ミステリの醍醐味である。

一方で、全体的な低予算感と適度なお色気も、テレ東深夜の面目躍如だと思う。ジョーのマッサージを受ける容疑者たちが男女問わず喘ぎまくる様子が、くだらなすぎて笑ってしまった。

脇を固めるキャラクターも魅力的だ。ハイテンションで可愛い、後輩マッサージ師兼探偵助手のあぐりや、おとぼけ刑事コンビのマネー&タイガー、頼もしくも秘めた目的をうかがわせる、ほぐす堂の主人・エコ婆など、強烈な個性を持つ面々が、寡黙なジョーに代わってサクサクとストーリーを展開させる。

 

パロディであることが、笑いを生み出すだけではなく、サクサク展開を可能にし、かつトンデモ設定を浸透させている秘訣だと思う。

たとえば昔話を題材にした漫才では、前提知識を利用し、手っ取り早く客を引き付けて、そこから逸脱することで笑いを生む。対して、最小限の説明で独特の世界観に引き込むことにより、そのルールの中で笑いを生むコントもある*3

このドラマでは、「探偵もの」という既存のフレームワークを意識させることで、視聴者は、①事件が起こり②状況説明があり③容疑者が集合し④探偵が謎を解く、という流れを予測し、脳内で補完することができる。おかげで、「体のツボを押して事件の謎を解く」という突拍子もない設定を驚くほどスムーズに受け入れていることに気付く。容疑者であったはずのジョーが突如、刑事を差し置いて容疑者たちを床に寝かせ、マッサージを施すといった多少強引な展開も、それ自体が笑うポイントであるし、むしろキッチュな世界観に沿った自然な流れのように感じられる。冒頭の名探偵パロディも、最高のつかみであると同時に、最高に効果的な導入だったのだと思った。

30分というごく短い時間で、名探偵による謎解きのカタルシスをもたらすばかりではなく、笑い、お色気、ツボの知識、さらには人間ドラマまで見せてしまう。「マッサージ探偵ジョー」は、ミステリの様式美とトンデモ設定が見事に調和した、おそるべきエンターテイメントなのだ。

 

さらに、エンディングまで気が抜けない。インド風の曲「お疲れサンクス」に合わせ、ジョーこと中丸くんが真顔で踊るのである。「逃げ恥」を彷彿とさせるキャッチーな歌とダンスは、謎の爽快感と中毒性がある。中丸くんはこの曲で「矢吹原丈」としてソロデビューを果たしており、配信サイトで3日連続1位を獲得したとニュースになっていた。「マッサージ探偵がドラマのエンディングでインド風の曲を歌い踊る」というヤバめの設定も、中丸くんが歌と踊りを本業とするジャニーズであることにより、違和感なく受け入れられる(気がする)。

同様に「欲求不満のマダムから全裸で迫られるも、見事な手さばきで快楽へと誘い、難を逃れる」という、男が貞操を守る謎展開も、アイドル中丸くんだからうなずけるものであるし、タブーの多いジャニーズだからこそ、ギリギリのネタが一層面白い。KAT-TUNのデビュー曲「Real Face」の有名な一節「ギリギリでいつも生きていたいから」は、このドラマの伏線だったのではないかとすら思えてくる。

 

ギリギリの中丸くんで思い出すのは、2015年ゼウスの番宣で、NEWS手越くんとニコ生に出演したことだ。出演といってもネットNGのジャニーズであるから、姿は映らない。芸人チーム(普通に映っている)と卓球等で対決しているのに、ジャニーズチームは声すらほとんど聞こえないという、シュールかつスレスレの演出だった。個人的にネットNGルールはやめてほしいと思っているが、そのせいで「顔は映っていないのにジャニーズの存在を感じさせる手とか影とかの写真」に興奮するという性癖が開発されてしまったので、ニコ生での限界に挑戦したネタが面白くて、中丸担と手越担が羨ましいと思った。ちなみに中丸くんは「声もなるべく出さないでください」という指示に早速「わかりました!」と答え、さらには事故的にカメラに映り込んでしまい、ギリギリどころかアウトだったと記憶している。

 

私はKAT-TUNと中丸くんには詳しくなかったのだが、今回、中丸くんがその童顔に反して背が高いこと、男らしくもすらりとして綺麗な手の持ち主であることを知って驚いた。この話を書くにあたって「中丸雄一 エピソード」「KAT-TUN コンビ」等で検索してしまったので、また新たな沼の縁に立っている気がしなくもない。

 

 

長々と語ったが、「マッサージ探偵ジョー」は、理屈をこねくり回すまでもなく、頭を空っぽにして楽しむことができるドラマだ。放送時間がやや遅いが、非常に実況向きなので、次回はツイッターでヤイヤイ騒ぎながら見たいと思っている。

一話完結なので第二話からでも楽しめるし、amazon Prime Videoでバックナンバーが見れるほか、テレビ放送に先立って最新話が配信されているので、気になった方はぜひ見ていただきたい。

土曜ドラマ「マッサージ探偵ジョー」は、テレビ東京系・日曜0:20~放送中!

 (公式サイト)

土曜ドラマ24「マッサージ探偵ジョー 」:テレビ東京

*1:ピューと吹く!ジャガー」の中で突如展開された別漫画

*2:うすた京介先生はコミックスのおまけページか何かで「メリー・ラクリマ・クリスティー」というネタを書いていた気がする。

*3:ラーメンズ笑い飯などは両方とも得意なイメージ